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焼け太り

焼け太り

複数の賭け市場のデータを集約し、大統領選挙の行方を占うRCP Betting Averageという指標があります。これを確認すれば、トランプ候補の優勢は明らかです。七割の勝算。バイデン候補のわずか二割と比べれば、その差は歴然としています。土曜日の暗殺未遂が、皮肉にも支持を固める結果となり、この一件を受けて、彼は候補者として焼け太りました。

この現象は、過去の例を思い起こさせます。DHロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』を翻訳した伊藤整は、発禁処分を受け、裁判沙汰になり、罰金まで科されたが、それはかえって泊がついたと言いますか、彼の文学者としての地位を高めたのです。ミュンヘン一揆の失敗後、ナチ党への支持が広がったのも同じ構図ではないでしょうか。判官贔屓的な同情と力強さと注目度が相まって、英雄の像が結ばれるということです。危機が英雄的に支持を高めたわけですが、主張の本質的な変化はないのだから、それは支持の材料たらしめるのかは、疑問です。

ただ、主張は変わらずとも、行動が伴いそうな感覚、何かをやってくれそうな予感、つまるところ『なんとなーく』と、凝固された個体的な本質が人々の心を掴むのですね。