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定量分析でファッション業界に往く

定量分析でファッション業界に往く

まだ全容が定まっていない状況ですが、定量分析×ファッションの分野で、大学の同輩とアパレルブランドのEコマースを始めることになりました。Eコマースにおいてデータ分析等の数学的処理が役立つことは明らかですが、ファッションの側面においても数学的処理が応用できるのではないかと考えています。

私が、この事業に着手しようと決意した所以は、要するに現代においてアイデンティティの確立が、ブランドなどの固有名詞に置き換えられているからに外なりません。インスタグラムの賑わいには、ブランド品や流行の店、そして恋人持ちといったステータス等の皮膚感覚的に気持ちが良い固有名詞が満ちあふれております。そしてその皮膚感覚的に気持ちが良い固有名詞によってアイデンティティを樹立する現代において、逆説的にいえばXという固有名詞が好きか嫌いかの性向を、他の固有名詞を定数として扱うことで、Xを好むや否やの性向を高い確度で予測し得るのではないか。そんな実験を試みたかったのです。

ボードリヤールの『消費社会の神話と構造』に示された理論に従えば、消費者は自らで自由に望み、選んだつもりで他者と異なる行動をするものの、その行動が差異化の強要やある種の規範への服従であると考えていません。他者との違いを誇示することは同時に、差異の全秩序を打ち立てることにもなりますが、この秩序こそが最初から社会全体の所為であり、個人を容赦なく超越してしまいます。個々人はこの差異の秩序のなかでポイントを稼ぎ、秩序そのものを再生産し、したがってこの秩序においては常に相対的にしか存在し得ないのが宿命なのです。つまるところ、ミニマリストという考え方さえ、消費社会を主軸においたものにほかならず、消費を基軸に据えぬことは現代社会を生きる上で殆ど不可能です。だからこそ私も、知的好奇心として消費社会への理解を深めんがため、アパレルブランドという消費社会の正真正銘の中心に身を投じ、実験的分析を重ね、独自の視点で闊歩してみようと思います。