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三島由紀夫

三島由紀夫

訪れた書店で様々な本が並ぶ様子を眺めるのは楽しいものです。世の中の流れを感じ取ったり、小賢く一丁前に選書のセンスを評価したり、そんな風に私は書店を楽しみます。私が特に注意深く観察するのは三島由紀夫作品のコーナーです。小学生の頃に『仮面の告白』を手に取った時、最初は『何で俺は同性愛のおっさんの性癖を聞かされてるのか』と思いましたが、読み進めるうちに、三島由紀夫作品の魅力に引き込まれました。三島由紀夫の文体は、派手でありながらも過度な装飾による中二病臭さがない綺麗な文章です。三島由紀夫風に言うなら『冬の日の武家屋敷の玄関の式台のような文体』でしょうか。また作家三島由紀夫ではない、彼の政治的信条に触れますと、多くの人々が彼を自衛隊への決起を呼びかけた『三島事件』の人物として知っており、ごりごりの改憲論者という印象が強いものの、政治思想について実は非常に柔軟なんですね。新しい形の国防組織の創設について彼は、どの外国とも同盟を結ばず純粋に私たちの防衛を目的とし、安保や他の国際条約とも独立した私たちのためだけの国防組織を設立しつつ、同時に日本のみを守るだけではなく安保やその他の枠組みともリンクし、国際平和のために貢献する組織も設立する案、すなわち国防組織を二つ持つという持論を展開しています。これは改憲せずとも達成できる案らしく、三島自身も大いに押してました。

三島由紀夫の政治観は、しばしば彼の劇的な割腹自殺によって歪曲して伝わりがちですが、防衛費の増強などが議論される今、彼の考えを再考する価値はあると思います。