私は『世界のすべてを計算可能にする』ことを目指しています。このビジョンには、言語を獲得して以来人類が抱え続けてきた客観世界との隔たりを解消したいという理想が込められています。
旧約聖書の失楽園に象徴されるように、知恵の実を食べ、言葉を得た代償に楽園を追放された人類は、外界の実在そのものを経験するのではなく、実在に対して言語的解釈の枠組みを重ねてしまうようになりました。つまり、私たちは客観にもとずいた純粋な経験ではなく、自らの経験に基づく言葉というレンズを通して歪められた世界を生きているのです。
計算可能な世界に対して不快感を持つ人もいるでしょう。しかしながら、本質的に人類は純粋経験に自身の言葉で輪郭を与える計算機と言えます。純粋経験とはいわば生のデータであり、私たちは、このデータを経験という変数で処理し、アウトプットを生成しているわけです。本来なら計算機同士は、異なる計算機が持つ多様な変数から生み出される結果をシームレスに比較し合い、相互に能力を拡張していくことが可能です。しかしながら、現状は、それらの解釈モデルのアウトプットが言葉という形で出力されてしまうがために、計算機としての大きな非効率が生じています。
万物を数値化し計算可能にすれば、この言語的制約から解放され、エデンの園のような理想世界を実現することだってできると考えています。知性によって失われた客観世界との関係性を数値により知性を残しつつ取り戻せるわけです。科学技術の発展はもちろん、公平な意思決定、ビジネスにおける新たな発見や創造性の土台にもなるでしょう。計算可能な世界では、私たちはあらゆる面で前例のない拡張性を得られます。あらゆるモノ・コトを数値化することで、自在にデータをつなげ合わせ加工・演算できるようになり、金融分野における、デリバティブのように、オリジナルのデータから新しいバージョンや形態を自在に生み出せるようになります。現在では創造が難しい、非財務的データを使った健康経営を促すための金融モデルも、自在に開発できるはずです。拡張性を持ったこの世界は、今までにない革新的な創造の可能性が開かれます。
世界のすべてを計算可能にする私の強い願望は、根源的な好奇心の渇望そのものなのです。知りたいことを知り尽くし、思い描いたことは何でもできるようになりたい。そして人類をさらなる進歩の域へと導きたい。そのために、一歩一歩前に進んでいきます。
・世界のすべてを計算可能にする
この概念は、あらゆる現象や対象が数値化可能であり、数学的またはアルゴリズム的に処理できる状態を指します。
・純粋経験
個人の主観的な解釈や言語的枠組みによって歪められていない、客観的な現実の直接的な体験を意味します。
・言語的制約
言語によって現実がどのように表現され理解されるかには限界があります。リンゴと聞いた時に人によって思い浮かべるリンゴ像は多種多様であり、この制約は、言語が持つ概念的枠組みや語彙の範囲によって、私たちが現実をどのように認識し、理解するかに影響を与えます。
・エデンの園
旧約聖書に登場する、人間が最初に置かれた理想的な住まいを指します。知恵の実を食べることで罪を犯し、エデンの園からアダムとイブは追放されました。
・デリバティブ
金融分野で使われる用語で、ある金融商品から派生した金融商品のことを指します。計算可能な状況であれば、デリバティブのようにありとあらゆるものが派生して、なーーんでもできます!!。
・現在では創造が難しい、非財務的データを使った健康経営を促すための金融モデル
弊社研究している。ヘルスケアワラントなどもそれに該当します。うーん難しい。